雪弥は、その作り物みたいなガラス玉っぽい目を見つめ返した。一つ瞬きをする間に、必要のないだろうと思われる面倒な思考工程は、彼の中でどこかへ行ってしまっていた。

 元々、兵として指示に従い現場で動く方が性に合っている。そもそもこの場においては、ソレが真実だとか、現実だとか、自分の中で判断するのは重要ではない。

 だから雪弥は、肩を竦めて冗談風交じりにこう答えた。

「世界から消えられたら、僕でも追えそうにありませんね。――それで、遠くへは行けそうにないその女の子ですが、宮橋さんなら捜せるんですか?」
「生憎、『どの向こう側の道』を歩いているのかも分からない状態では、無理だね」

 ちょっと気分が良そうにして、宮橋が前へと目を戻してそう言った。

「その割には、自信がありそうですね」
「どこの範囲にいるのか分かる者に心当たりがある。遠くへは行けない、というのが幸いしたな」
「なるほど。捜索は思った以上に簡単そうだ、と考えているわけですね」