蒼緋蔵家の番犬 3~現代の魔術師、宮橋雅兎~

 後半、彼は独り言のように思案げに口にする。

 捜し歩く、と雪弥は己で理解しようと反芻してみた。けれど浮かんだのは、意識が朦朧とした状態で、ふらふらと彷徨い歩く中学三年生の少女の姿だった。

「そうだ――だから『子の骨』程度の影響であれば、遠くへは行けない」

 まるで想像を察したかのようなタイミングで、宮橋がそう言った。

「とはいえ、誰にも気付かれないまま家を出た彼女は、引き続き『向こう側』と『こちら側』を歩いているだろう。とすると、しばらく馬鹿三鬼らに見付ける事は難しい」
「はぁ、それで宮橋さんが捜そうとしているわけなんですか……」

 それについてはどうにか察せて、雪弥は気の抜けた声で相槌を打った。少し考えて、つい言葉を続けてしまう。

「出歩いているのに『見付けられない』なんて、不思議だなぁ」
「何も不思議じゃないさ。この世界から一時的に消える、そうやって存在さえ見えなくなった相手を、どう捜すというんだい」

 ようやく視線を返してきた宮橋が、フッと口角を引き上げる。