蒼緋蔵家の番犬 3~現代の魔術師、宮橋雅兎~

「骨の影響か……」

 ややあってから、珈琲をテーブルに置いて口の中で思案気に呟く。その途端に宮橋が、わざとらしいくらいに大きな溜息を吐いて髪をかき上げた。

「馬鹿三鬼。お前、ほんと面倒を連れてくるよなぁ」
「え、ちょ――はあああああああ!? なんでいきなり俺が貶(けな)されてんだよ!?」

 ガタンっ、と音を立てて立ち上がった三鬼が「そもそもな!」と指を突き付ける。その際に最後のスコーンが取られた皿が揺れて、雪弥は咄嗟に片手で押さえていた。

「テメェが勝手に無断外出したせいでッ、俺の方の仕事が増えたんだぞコラァ! 新人への研修で一体何やってんだよ、まず普通は各部署の案内だとか、業務の説明だとかからやるべきであって――」
「先輩こらえてッ」

 藤堂がすかさず、三鬼の胴体に飛びついて止めた。

 そうやってぎゃあぎゃあ騒いでいる様子は、県警の方で見掛けた『引っ張り』『引っ張られ』の光景に少し似ていた。雪弥は呆気に取られつつも、スコーンを最後まで食べ終えた。

 その時、見計らったように宮橋が立ち上がった。