蒼緋蔵家の番犬 3~現代の魔術師、宮橋雅兎~

「ああ、遅くとも明日までには起きるだろうさ――…………お前が、原因の骨を引き離して持ってきたからな」

 ぼそっと宮橋が言って、珈琲をテーブルに戻した。道路側からのぎわめきに紛れて聞こえなかった三鬼が、「なんて言ったんだ?」と癖のようにして思いっきり顔を顰める。

 また『骨』だ。

 しっかり耳にしていた雪弥は、指先に付いたクッキーの屑をペロリとしつつ、横目に宮橋を見やった。そうしたら、気付いた三鬼がこちらを見て「おい新人研修」と呼んできた。

「藤堂に食われる前に、そっちのマフィンも食っとけ」
「え。あ、はい」

 雪弥は、少し遅れてそう答えマフィンを手に取った。

「ひどいですよ先輩。俺、年下から取り上げたりしないです」
「んなの分かってるから、いちいちツッコミすんなよ。俺はな、お前みたいにスマートに気遣いやらが出来ない男なんだよ」

 ぶすっと顰め面を強めて、しっしっと手でやった三鬼が「無視しろ」と言う。食べ掛けのマフィンを片手に、呑気に首を傾げた藤堂のそばで宮橋がニヤッとする。