蒼緋蔵家の番犬 3~現代の魔術師、宮橋雅兎~

 先にマフィンの一つを手にとってパクパク食べ始める彼に、もしや甘党だったりするのかなと推測しつつ雪弥は「はぁ、すみません」「ありがとうございます」と答え、まずはカフェラテを口にした。

 それは、あっさりと甘くて飲みやすかった。藤堂の食べっぷりを眺めながら、つられるがままクッキーを手に取ってサクリと食べる横で、宮橋が三鬼にこう言った。

「その女学院生の件は、検問で引っ掛かって車中の死体が発覚しての、スピード逮捕だったんだろ? それなのに他に用があるのかい」
「その被害者の妹についても話したろ。昨日の夜から、パタリと目覚めたくなったっていう中学三年生の『ナナミ』だ」
「ああ、そういえば聞かされたな」

 宮橋が、思い返すようにして長い足を優雅に組む。珈琲を片手に道路側へと視線を流し向けている美麗な顔を眺めつつ、三鬼が頬杖をついて話しを続けた。

「朝に俺がちらっと相談したら、なんとかの影響を受けているだけだとかで、しばらくすれば起きるってお前言ってただろ?」