蒼緋蔵家の番犬 3~現代の魔術師、宮橋雅兎~

「先輩、前々から思ってますけど、デサード系の扱いがぞんざいすぎません?」
「俺は甘いものだとか、そういうのはよく分かんねぇんだよ」

 立ち上がった藤堂が、三鬼から財布を受け取った。宮橋が横から「だからお前はモテないんだよ」と指摘し、三鬼も目を向けないまま「うるっせぇ」と言葉を返した。

 なんだか仲が悪そうだ。けれど、これがいつものやりとりのように言い合い慣れている感じもあって、雪弥が戸惑いがちに目を向けると、席を離れる前、藤堂も『気にしないでください、大丈夫です』と柔らかな苦笑を返してきた。

 会話がピタリと途切れて、道路側からの走行音や通行人のざわめきが大きく聞こえていた。出来る事もなくて大人しく座っていると、三鬼がスーツの胸ポケットに手を触れた。

 恐らくは煙草だろう。雪弥が宮橋の言葉を思い返して見つめていると、視線を返してきた彼がピタリと手を止め――それから、「ふぅ」と煙草を戻してそのまま手を降ろした。