「三鬼は、そこそこのヘビースモーカーでね。うちの課にもまぁまぁ喫煙組はいて、最近は全席禁煙の店が増え始めているから、この辺だと待ち合わせ場所は大抵固定してくる。あのカフェも、そのうちの一つさ」
「はぁ、そうなんですか。でも仕事の話とかしづらくありませんか?」
「人に聞かれて『まずい話』であれば、ここを待ち合わせにしない。そもそも仕事中は煙草の本数を減らすだの言っているのに、ストレスが溜まるんだとかで有言実行できていない三鬼もどうかと思うけどね。僕は、あいつの喫煙を高確率で見ている」

 もしやそれ、宮橋さん限定でそうなっているんじゃ……? 雪弥は、先程の電話の様子を思い返して、そんな事を想像してしまった。

 歩道の信号が青に変わって、宮橋が歩き出した。そのまま隣を付いていって二階建てのカフェに向かってみると、遠くから見た印象を裏切らない立派な建物があった。一階部分の外側にはテラスの喫煙席があって、一つだけ埋まっているテーブル席に二人の刑事がいた。