電話で連絡をもらった後、雪弥は宮橋の後について一緒に山を下った。

 青いスポーツカーに乗り込んですぐ、宮橋が来た道を戻るように車を走らせた。山々のある土地を離れるように、猛スピードで田舎道を走り抜けて一旦高速に乗り上げる。一番速いルートでもって再びN県へ入ると、そのまま都心入口で高速道路を降りた。

 高層ビル群の見える風景を横目に国道を進んだ後、宮橋は一つの立体駐車場でスポーツカーを停めた。そこから徒歩で、都心のド真ん中にある待ち合わせ場所へと向かった。

 指定された待ち合わせのカフェは、キレイな商業ビルに挟まれるようにして建っていた。信号待ちの大きな交差点からでも見える二階建ての店は、こちらまでも品が溢れたお洒落な感じが伝わってくる。

 その立派な外観を、交差点から眺めながら雪弥は尋ねた。

「刑事さんが話す場所のイメージがないんですけど、なんでココなんですか?」
「煙草が吸えるからさ」

 隣に立つ宮橋が、信号を目に留めたままつまらなそうに答える。立っているだけで絵になるすらりとした長身の彼と、随分若い容姿なのにブラック・スーツがやけに似合っている細身雪弥を、同じく信号待ちをしている人達が男女問わずチラチラと見やっていた。