「『見た』だけだったから、僕もどこで会うのかまでは分からなかったんだが、どうやらココだったらしい。ああ、先に言っておくが、僕は中立の立場として姿を『不認識』させてもらう」
「はぁ? あの、それどういう――」
「とにかく下ろうか。話を聞かない事には、相手の用件は分からない」

 そのまま背中を押されて、来た時とは逆に前頭に立たされてしまった。ぐいぐい押して戻りを促す宮橋を、雪弥は肩越しに見やって「あのですね」と声を掛ける。

「道順、ぼんやりとしか覚えてないんですけど、僕が前でいいんですかね?」
「おい君、僕をナビ代わりにして最初(ハナ)から覚える努力をしなかったな? この微妙な青年身長、このまま縮ませてやってもいいか」

 イラッとした様子で、後ろから宮橋がガシリと頭を掴んでくる。冷やかに睨んでくる美しい目から、ひしひしと怒りが伝わってきて雪弥は「すみません」と反射的に謝った。

「反省しますんで、ぐりぐりするのやめてくれませんかね……」