「あなたが有るというのなら、その見えないヤツというのは『有る』んでしょう。僕は今、あなたのパートナーで護衛任務も兼ねています――で? 下僕(ぼく)はどう動けばいいですか?」
「へぇ、随分あっさりしているんだな。仕事柄細かい事も気にしそうだと思っていたけれど」
「だってそこに『有る』というのなら、僕は何モノだろうが殺すまでですよ」

 すると宮橋は、どこかおかしそうに愉しげな調子で相槌を打つ。

「そりゃ随分物騒だ」

 言いながら、またしてもバックミラー越しに何か見た様子でハンドルを切った。アクセルを踏んでスピードを上げた際、何かがタイヤの横を擦る音がした。

 やっぱり何かいるみたいだ。

 雪弥は、興味津津といった様子を窓から顔を出して覗き込んだ。でもどんなに目を凝らしても、吹き抜けていく風の音に混じる、妙な風の僅かな抵抗音しか分からない。

「衝撃音から推測するに大きそうなのに、風を受けている音量と合わないなぁ……」