「僕も仕事上、色々とありえなさそうな研究や実験は見てきましたけど、やっぱりよく分からないです。そもそも、どうして僕に教えてくれるんですか?」
「正確に言うと、教えているわけじゃないさ。ただ一方的に論じてる。実に忌々しい事に一部の連中が、僕の事を『魔術師』と呼ぶように、僕は魔術師(それ)らしくもあるというわけだ」
「魔術師?」
「おっと失礼、ただの定義と有りようからの呼び方さ。現代における魔術師というのは、(ことわり)を見、中立に立ち、それでいて――『理解されなき物語を知る者』」

 そもそも本当の魔術師はもう死んだ、と宮橋は不思議と明るいブラウンの目で見据える。その美麗で不敵な笑顔を前に、雪弥はやっぱりガラス玉みたいな目だなという印象を覚えた。


「はたして君は僕を信じるかい、雪弥君?」


 そんな事を問われた。

 よく分からない人だ。否定するには、それなりの根拠と理由がいるだろう。信じるも何も、と雪弥は思って袖口を少し緩めて動きやすくしつつこう答えた。