「…………実は、だな」
「はい?」

 珍しく、彼がすごく言いづらそうにしている。雪弥が訝ってじーっと待っていたら、やがてナンバー1が、引き続き目をそらしたまま言ってきた。

「…………………既に全員一致で、決まったそうだ」
「は……? 何が?」
「お前の、副当主の就任が、だよ」

 しばし、言われた事を理解するのに時間を要した。

 タクチク、と、室内に秒針が刻む音が流れる。そばに控えていたリザが、入った内線に代わりに出て対応した。

 その数秒後、雪弥は察して叫んでしまった。

「はぁあああああ!? え、つまりなんですか、僕が宮橋さんのところにいる間に、勝手にそんな事になっていたんですか!?」

 直接本人に告げに言った僕の意見が、全く考慮されていない!?

 雪弥は、思わずテーブルに片足を乗せて、ナンバー1に掴みかかっていた。

「え。待って、それ、いつの間に?」
「知らん。昨夜いきなりお前への招待状が届いて、そう事後報告されたんだっ。昨日あった件もぐちぐち言われて――て、おい。お前、上司の胸倉を掴むのはやめなさい」