「君の目に見えないだけさ」
宮橋が、こちらに横顔を向けたまましれっと答える。
またしても、きゅっとハンドルが切られてスポーツカーが車線変更する。何かが空気を押すような音を耳で拾った雪弥は、そちらを横目に留めつつしばし考えた。
「見えないのに『ある』とか、ありえるんですか?」
「ふっ――考えてその質問か」
君は素直なのかね、と宮橋が小馬鹿とも自嘲ともとれない笑いをこぼした。彼は独り言のように「普通なら『もっと疑う』」と呟くと、雪弥が向くのに気付いて視線を返した。
「ありえるのさ。君が目に留めている世界以上に、この世は色々と混じり合って複雑なんだよ。それに関わる機会があるのか、それとも縁がないままに人生を終わる者もいる」
宮橋が、片手をハンドルから離して手振りを交えて言う。
雪弥はなんとも言えば良いのか分からず、首を少しだけ傾げた。開いた窓から入り続けている風が、灰と蒼が混じり合ったような色素の薄い髪を揺らしている。
宮橋が、こちらに横顔を向けたまましれっと答える。
またしても、きゅっとハンドルが切られてスポーツカーが車線変更する。何かが空気を押すような音を耳で拾った雪弥は、そちらを横目に留めつつしばし考えた。
「見えないのに『ある』とか、ありえるんですか?」
「ふっ――考えてその質問か」
君は素直なのかね、と宮橋が小馬鹿とも自嘲ともとれない笑いをこぼした。彼は独り言のように「普通なら『もっと疑う』」と呟くと、雪弥が向くのに気付いて視線を返した。
「ありえるのさ。君が目に留めている世界以上に、この世は色々と混じり合って複雑なんだよ。それに関わる機会があるのか、それとも縁がないままに人生を終わる者もいる」
宮橋が、片手をハンドルから離して手振りを交えて言う。
雪弥はなんとも言えば良いのか分からず、首を少しだけ傾げた。開いた窓から入り続けている風が、灰と蒼が混じり合ったような色素の薄い髪を揺らしている。