そして、その翌日。

 雪弥は、任務終了をナンバー1に改めて報告した。新しいブラックスーツを着た彼の、その上着の下ポケットからは『白豆』が呑気に覗いていた。

「なんだ、君も鏡で手入れくらいはするんだな」

 ふと、廊下前の鏡の前に立っていたら、そう声を掛けられた。

「宮橋さん」

 振り返ると、そこには色の付いた高級スーツに身を包んだ宮橋がいた。本日も、いつもと変わらず出社らしい。

「刑事さんも、大変ですね」
「これで休んだら休んだで、とくに小楠警部(じょうし)馬鹿三鬼(どうき)が煩い。爆発に関わったんだろうと、昨夜だって電話が五月蠅かったんだ」

 確かに、電話越しに何度か怒鳴ってたなぁ、と雪弥は昨夜でのリビングの様子を思い返した。

 すると「それで?」と、宮橋が訊いてきた。

「鏡で顔を見て、どうした」
「へ? あ、いや、その、バンソーコが、ちょっと……」

 雪弥は、ぎこちなく視線をそらした。

 今、顔に一つ、それから首や覗いた手にも、白いガーゼがちらりと見えてる状態だった。そのしどろもどろの返事だけで察したのか、宮橋が嫌な感じの笑顔を浮かべた。