「本来は、そういうものだろうね。僕が心底、怒りをこらえているのも、お前には分からないだろうよ」

 でも、と宮橋は張り上げていた声を唐突に弱めた。

「……でも、この子は違ったんだから、しょうがない」
「やはり不完全なのか」
「それは君自身が、身体で答えを感じ取っただろうに」

 ニヤリ、と見下ろす宮橋の顔に笑みが浮かぶ。

「魔術師の、問答か」
「答えられる範囲と、それを伝えられるタイミングは決まっている。僕は、今の君には〝答えられない〟」

 見つめ合う怨鬼との間を、ミサイルが通過していった。宮橋が、ふうんと読めない笑顔で流し目を向ける。

「そもそも火薬だの、鉄の固まりだの、そして所詮は人間の〝鬼〟――それぐらいで彼が止まるものか」

 不意に、空気が変わる。

 怨鬼が異質さを察知して、バッと雪弥の方を振り返った。

「あれくらいで『しまいになる』? ハッ、馬鹿をいっちゃいけないよ。君が、存在している方の現代の〝鬼〟だとするならが、彼は存在している方の〝獣〟――三大大家の一つが、禁忌を犯してまで手に入れた本物の【番犬】だぞ」

 ――直後、ぐんっと雪弥が起き上がった。