「放っておいても、死ぬか」

 まだ息を整えている怨鬼が、そう言ったところで、ふと気付いて宮橋がいる方を見上げた。

「気配を断つ術を解いて、良かったのか。魔術師よ」
「つい、うっかり、ね」

 強がりで笑った宮橋の手は、支えにしていた鉄骨の形が変わるほど握り締められていた。

 怨鬼が、獣のような赤い目を鈍く光らせたまま、ふうむと首を傾げる。

「手助けするかと思ったぞ」
「しないよ。僕は、中立だ。勝敗には手を貸さない」
「それにしては、強い殺気を感じたが」
「そりゃそうさ。迷いがあるから、そうなるだろうと予想していた経過だった。でも、実際に目の前にすると、思った以上に、クるなと」

 ギギギ、と宮橋が握るクレーンの鉄部分が、馬鹿力で更に形を変える。

 怨鬼と上から目を合わせた宮橋は、言う。

「そもそもね、ほんと、この子バカだなって。いちいち気にするなと僕は言った。それでいて、この僕が足枷の一つになっているとか、冗談じゃない」
「我にも分からん情だ」