ギシリ、と思考が動きを止めた一瞬、そんな声が聞こえた直後に全身を打たれる衝撃を覚えた。

 咄嗟にガードしたものの、そのまま雪弥の身体は吹き飛んだ。そのスピードに付いていった怨鬼が、先廻りをすると、上から両手を一気に振り降ろして地面へと打った。

 雪弥の身体が、超高速で落下してコンクリートを砕き割った。

 土埃を上げ、ようやく静かになる。

「もう、しまいか」

 続いて着地した怨鬼が、そう言うと、少し切れた息を整えながら拳を撫でた。

「それにしても頑丈であった。こんなに打ったのは、初めてである」

 確かに不覚だったのは認める。でも、何が悪い。

 ぴくり、と、雪弥の指先が微かに反応する。

 そばにいて、助けられないなんて、もう、あの大学生のような事はしたくないのだ。

 ――だって宮橋さんは、『助けて』なんて、言いそうにない。

 だから雪弥が、気をかけていないといけないって。そう頭のどこかで思ってしまったのだから、しょうがないのだ。