見てみると、向かってくる怨鬼の身は傷だらけだ。大きな損傷口がじゅくじゅくと治癒するが、その治りは先程より浅い。

「そう悠長に休んでいると、死ぬぞ」

 鈍く光る赤い目で見据え、怨鬼が言った。

「番犬よ、人の思考を頭から切り離せ。本能に従うのだ。なぜ多く人の思考に戻る」

 そんな事を言われても、よく分からない。

 押し潰した背中の鬼共の死体から、雪弥は立ち上がった。ケホッと小さく咳き込んだ際、飛んできた邪魔なミサイルを空中で一刀両断する。

「――ふむ。迷いがあるのか」
「あ?」
「お前は背の後ろに置いた〝もの〟を、完全に信頼して思考から切り離しはしないのか」

 すっ、と、怨鬼の指が差した先に気付いて、意識が引っ張られる。

 ――向こうには、宮橋さんがいる。

 ずっと気を向けている事に、気付かれいるのだ。外から爆撃されるなんて、思ってもいなかったから。

 宮橋さんに怪我があったら。もし、死んでしまったら。

 だって彼は、自分と違って、弱い人間なのだ。

「ほれ。また、気を取られたぞ」