強靭な身体。それでいて〝切断〟を回避する器用さ。

 ――これが、存在している本物の〝鬼〟か。

 雪弥は、青い目を煌々と光らせた。先程からぶつかり合うたび、接近して気配を濃厚に感じ取るたびに、腹の底から言葉にならない不快感が込み上げる。

「それは我が、今も昔も獲物であるからだろうよ」

 攻撃を相殺し合い、睨みあった一瞬、怨鬼がニィッと白銀の歯を見せて嗤う。

「あ?」

 雪弥は、つい訝って品のない声を上げた。

「化け物退治の三大大家――その若き番犬。だから我とお主は、血で、もう合わんのだ。だから、我もお主を殺したくてたまらないわけだ」
「血でって」
「継承された血の記憶が、生きるためにソレを殺せと、耳元で煩く喚き立てる」

 そう、怨鬼が低く言った。

 よける事は想定済みだったのか、不意に怨鬼が、割れたコンクリートをしたたかに拳で打った。砕かれたそれが、猛スピードが突っ込んでくる。

 雪弥は、腕を振るって馬鹿力で弾いた。