「あなたも酷な事をする」

 そこは、彼も少し同情するような笑みを浮かべた。誰に、どこの人に……とは明確にしない。

 言葉を掛けられた夜蜘羅は、菓子の包みを解きながら言う。

「人間の副当主は、戦士部隊長であったと聞く。あれくらいで壊れてしまうようでは、話にならない」

 でもまさか、早々に軍艦を丸ごと一隻ぶつけるとは、思わなかったわけで。

 いや夜蜘羅自身なら、平気で生き残れるだろうけれど。

 門舞は、そんな事を少し思って――けれど別に深く興味を抱くところでもなかったので、うんと一つ頷いて思考を終わらせた。

「その日本菓子、僕も頂きます」
「いいよ。はい、どーぞ」

 わざわざ、今、夜蜘羅が包みから出したばかりの菓子を、門舞の掌(てのひら)の上に置く。

 そこに置かれたのは、あまり見慣れない抹茶味のチョコ。

 門舞は、なるほどと頷いた。

「包みを開いてみたら、あなたの好みではなかったわけですね」
「気分じゃなかったんだ」

 あっさり認めた夜蜘羅は、続いて別柄の包みを開いて、ようやく発見した純粋なチョコ味を口に放り込んだ。