「あなたの自由にならないから、でしょ」

 門舞もまた面白い一件だったので、処置された片目に血が滲むのも構わず、肩を揺らして笑った。夜蜘羅が「その通り」といたく満足げに笑む。

「目、潰れなくて良かったね?」

 ――本心なのか。それとも、からかいなのか分からない言葉。

 でも、門舞だって〝どっちでもいい〟のだ。夜蜘羅がどう考えていようが、愉しければそれでいい。にっこりと微笑んだ。

「結界に干渉しようとして、その寸でのところで手を引きましたから、向こうに目を奪われずに済みました。ほんと、全然見えて来なくって」

 そこで彼は、少し肩を竦めてみせる。

「見えない方のモノに、浅知恵で手を出すべきではないですね」
「領分が違うからねぇ。雪弥君、プレゼントした両方の鬼、喜んでくれるかな?」

 すぐに夜蜘羅の関心は、別へと移る。テーブルに置かれてあった、包み菓子の一つをつまんで、鼻歌交じりに指先で遊ぶ。

 その楽しげな様子を見て、門舞は秀麗な眉をやや困ったように寄せた。