それだと単につまらない。だから彼は、時々下の者が驚く、突拍子もない『笑えない遊び』をする。

「恐らく、魔術師がそばにいるんでしょう」

 その向かいで、幹部メンバー中もっとも若い門舞(かどまい)が言った。

「〝(ことわり)〟を熟知している者ほど、均衡が崩れるのを嫌うと言いますからね。でも不思議な事に、彼、いまだ〝僕の目〟でも全然見えないんですよ」

 ティーカップを口元に引き寄せた彼を、夜蜘羅が見た。

「ふっふっ、目は大丈夫かい?」

 気味の悪い笑みが、夜蜘羅の喉の奥で鳴った。

 予想外で〝愉しかった〟のだろう。会合の中で、唐突に上がった悲鳴。その注目の中心にいた門舞を見た時、夜蜘羅が心配する表情を作るのを忘れていたのを、門舞は見ていた。

「おかげさまで」

 門舞は軽く笑って答えた。唐突に流血して騒ぎになった片目は、既に応急処置がされていた。面白かったからなのか、気前よく彼に〝蜘蛛の糸〟で押さえてもらったから出血も止まっている。

 そして、こうして一旦休憩を取って、ラウンジにいた。