「おい、『鈍い光』だと? これだけ攻撃されていながらか?」
「はい、ナンバー1。現場周囲から情報を集めようと思って動いてみたところ、そういう事になっていて、我々もいよいよ分からない状況に」

 男の言葉は、続かなかった。

 先程からずっと自分の仕事にあたっていた一人が、イヤホンマイクを口の前からややそらしながら「ナンバー1!」と呼んだ。

「どうにか信号をハッキングして、こちらから何度も呼び掛けていますが、現在も未確認の軍艦から応答はありません!」

             ※※※

 広いホテルのラウンジで、二人の美しい男が休憩を取っていた。一人は西洋寄り、もう一人は東洋寄りの武人みたいな凛々しい目鼻立ちをした男だ。

 ――貫禄を漂わせてはいるが、実年齢が分からない方は、夜蜘羅(よるくら)である。

「始まったみたいだね」

 でも、と囁き声を落とした彼が微笑む。

「大騒ぎになるかと思ったのに、残念だなぁ」

 そのへんは何も考えていなかった、というような様子だ。子供みたいな無垢さと好奇心。しかし、その頭の中では自然と何十パータンを描いてしまってもいる。