ドゥッ、と鳴った鈍い音の一瞬後には、一人の鬼の首が胴を離れていた。

 雪弥の伸びいた長い爪が、日差しを受けて血飛沫の中で凶器に煌めく。

「さすがは番犬候補! 話に聞いていた通りの爪(ぶき)よ!」

 大将の怨鬼が、腕を組んで堂々と構えた姿勢でアッパレと叫ぶ。

 番犬候補とはなんだ、次期副当主と、何故みんなしてさせたがるのか。今、そんなのはどうでもいい。

 斬りごたえのある肉感が、冷めや指先から伝わってくる。次々に襲いかかってきた鬼の、腕を引き千切り、眼球ごと顔を手刀で貫通させ、その腹部の臓腑を容赦なく引き裂いて切断した中で、雪弥はそう思った。

 振り降ろされた大きな己を、込み上げる不快感のまま、拳で打って粉砕した。

「ここにいるのが、殲滅部隊の〝全員か〟」

 雪弥は、光る青い目で向こうの怨鬼を見据えて、声を響かせた。この中でまともに話せるのは彼しかいない。

「怪力も、その細い身で我と互角か。なんとも良き好敵手か」

 怨鬼が、隠せない鬼の闘気を滲ませて、赤く光る目でニィッと笑った。