宮橋が、ポケットにしっかり『白豆』をしまうのを、雪弥は見届けた。ネクタイをシャツの中に一部しまい、スーツの袖口もしっかりと絞め直す。
標的を見据え、冷静に支度する雪弥の隣から、宮橋が奥の黒い何かを眺めやって言う。
「それにしても、面白い。一体何かと思ったら、あれは〝蜘蛛の糸〟か」
「蜘蛛?」
「ふふん、あの魔術師風情が風間(かざま)の店の奥に入れたカラクリが、少し分かった。あの蜘蛛の糸は、自由にどこにでも繋がれて、そして気付かれない類の能力を固有に宿しているらしいな。僕くらい目が良くないと、なかなか〝見えづらい〟」
不思議な能力、という事だろうか?
雪弥は、そういえば夜蜘羅と初めて遭遇した際、夜狐達でさえ察知していなかった事を思い出した。
よくよく考え直してみれば、それは〝異様な状況〟である。
「蜘蛛の糸、ですか……」
「覚えおくといいよ。今は多様でも、いずれ君に必要な情報の一つになるだろう」
その時、黒いモノが消えた。
ぞろぞろと場を埋め尽くし、向かってくるのは鬼の大群だ。その先頭に立った怨鬼が、一度彼らの足を自分の後ろで止めさせた。
標的を見据え、冷静に支度する雪弥の隣から、宮橋が奥の黒い何かを眺めやって言う。
「それにしても、面白い。一体何かと思ったら、あれは〝蜘蛛の糸〟か」
「蜘蛛?」
「ふふん、あの魔術師風情が風間(かざま)の店の奥に入れたカラクリが、少し分かった。あの蜘蛛の糸は、自由にどこにでも繋がれて、そして気付かれない類の能力を固有に宿しているらしいな。僕くらい目が良くないと、なかなか〝見えづらい〟」
不思議な能力、という事だろうか?
雪弥は、そういえば夜蜘羅と初めて遭遇した際、夜狐達でさえ察知していなかった事を思い出した。
よくよく考え直してみれば、それは〝異様な状況〟である。
「蜘蛛の糸、ですか……」
「覚えおくといいよ。今は多様でも、いずれ君に必要な情報の一つになるだろう」
その時、黒いモノが消えた。
ぞろぞろと場を埋め尽くし、向かってくるのは鬼の大群だ。その先頭に立った怨鬼が、一度彼らの足を自分の後ろで止めさせた。