今、何を考えていた……?

 でも、すぐにまた分からなくなる。けれど鬼の大軍の中、あの大男の呼び名が怨鬼であるのは悟っていた。

 宮橋が、そこで高みの見物から雪弥へと目を移した。

「彼らの一族は、現代に存在している鬼の集団の代表なのさ。生まれながらに鬼、一族の者が死して鬼になるのも多々――これで分かったかい?」

 人ではない、と彼が先程言った事ほの問い掛けか。

 そう言われたとしても、否定する言葉は出てこない。肌で感じるのは、異常な〝異質さ〟だ。おおよそ同じ人であると言い切れない、死人か地獄を彷徨う悪鬼のような感覚。

 雪弥は先程、宮橋が〝残念ながら〟と表現した理由が、分かった気がした。

「これで、僕がいようと君は迷わないだろう」
「――そう、ですね」

 実のところ、少し宮橋がいるのがやりづらいと感じていた。彼は『刑事』で、雪弥とは生きる世界がだいぶ違っている。それは、過ごしたこの数日で分かっていた。