いや、そんなはずはない。

 そうなのだけれど、でも、どうしてこんなに既視感があるのか――。

 その時、向こうから〝唯一言葉が発せる鬼〟と目が合った。続いて雪弥は、彼が怒号を上げるのを聞いた。

「約束通り殺しに参ったぞ! 蒼緋蔵家の番犬候補よ!」

 自我も失ったような大男達の先頭に、一回り大きな、以前山で怨鬼一族だと名乗ったあの大男の姿があった。

 彼が、この特攻と殲滅部隊のリーダー。

 見据える雪弥の蒼い目が、殺気を帯びて冷やかに光をまとう。

『約束通り、来た! 我は怨鬼の部隊長なり!』

 一瞬、覚えのない記憶の声が重なって、脳がぐらりと揺れた気がした。

 そうだ。アレ以外に、話せるまともなモノなどいなかった。来るたびにそうだった。何代目になろうと変わらない一つの事。それが、彼らの一族だった。

 ――蒼緋蔵の本家に、青い目を持った男児が一人、生まれるようになったのと、同じ。

「これも、宿命なのかねぇ」

 ふと、そんな呑気な美しい男の声が耳に入って、雪弥はハタと我に返った。