固定式の巨大機器の上に昇った。アームが付いている固定台の頭頂部までいくと、地上からはかなり高い位置だ。

「おぉ、なかなかに高いな」

 だが宮橋は平気そうに言うだけで、すとんと鉄の足場に腰を下ろした。足元をぶらぶらさせて下を覗き込む様子に、雪弥はちょっと珍しいなと思ってしまう。

 エージェントの仕事で連れた下ナンバーの人間も、このくらいの高さだと、雪弥がよく分からない事を言ったりするのだ。怖いだとか、落っこちたらひとたまりもないだとか……。

「着地すればいいのでは、と思っているのは君だけだからな」

 隣に立って下を見下ろした雪弥に、間髪入れず宮橋が言った。

「君は、自分が思っている以上に厳しい上司感があるんだと自覚しろ。それが知っている〝家族や人〟だったら、どうするか考えてみたまえ」
「危ないから、そもそも昇らせませんよ。何を言っているんですか?」
「君こそ、真顔で何を言っているんだ?」

 こいつ、という感じの目で、しばし宮橋が雪弥と見つめ合った。