「そのへんもきっちり仕組んだ。僕がこの結果内にいる間、手を出そうものなら〝相当痛い目をみる〟だろうね――違和感は、もうないだろう?」

 宮橋が肩越しにちらりと見やって言葉を投げた。納得できかねるという表情をしていた雪弥は、視線を落として首の後ろを撫でる。

「確かに。あの一瞬だけでしたけど、余韻のぞわぞわが残ってます」
「文句を言うんじゃないよ。君がいちいち外を気にかけなくていいように、僕が舞台を整えてやっているのに」

 雪弥は、ふっと宮橋の背に目を戻した。

 次の場所を目指すように、宮橋がフェンス域から離れて歩き出した。ひらひらと片手を振って、言う。

「君は、バカで不器用なくせに、一度に全部を考えようとして、いちいち迷いのループにはまるみたいだからね」

 そう告げた宮橋の明るいブラウンの目が、不意にこちらを振り返る。

「いい機会だ。荒治療とはよくいったものだが、こうして君らのところにわざわざ引っ張り出された。ご指名を受けた相談役として、一つ、君の引っ掛かりを、すっきりさせてやろうじゃないか」

 ねぇ、と宮橋が唇にあやしげな美しい笑みを浮かべた。

 それは、なんだか兄の蒼慶が、時たま親族や社交相手に見せるものと似ていた。雪弥は反射条件のように背中がぞわぞわして、訊き返すタイミングを逃した。