呟きを放った宮橋の背に、バッと目を向ける。すると見越していたかのように、彼が軽く手を上げて雪弥に応えてきた。

「君が苦手な系統のモノだとは、分かっているよ。でも、これから何かが起こったとして、その騒ぎを外にもらさない、そして内側からも外へ出さないための準備は必要だ」
「……そのために、ずっとこうして歩いていたわけですか?」

 先日にあった、廃墟ビルの一件が脳裏をよぎる。

 あの時も、結局は外に騒ぎが微塵もれていなかったようだった。帰りの道のりで、パトカーのサイレン一つなかったのを不思議に思ったほどだ。

「〝無音状態〟と〝結界〟。僕が僕として可能である前者の方法、そして魔術師として可能な後者。今回は念には念を入れて、その二つを貼らせてもらった」

 肩越しに、手ぶりを交えて宮橋に説明された。

「まぁ、ついでに別の仕掛けもやらせてもらったがね」
「はぁ。そう言われても、よくは分からないんですが……もしかして『魔術師風情』とかいう者への、仕返しも含まれていたりするんですか?」