「そうなんじゃないですかね」

 ふぅと肩から力を抜いて、雪弥は暇を潰すように冗談でそう答えた。

 その後ろで、ピシリと機内に緊張が満ちた。けれど雪弥が全く見向きもしないのを、宮橋が面白そうに眺める。

「さ、行きますか」

 そう口にすると、宮橋が希望したその〝ポイント地点〟へ向けて、まずは雪弥が空へと躍り出て降下を開始した。

 続いて宮橋の番――と思いきや、彼が世話になった軍人をくるっと振り返った。そして美しい顔でにこやかに笑う。

「諸君! なかなか面白い経験になった、ありがとう」
「あっ、いえ、お気を付けて……」

 そんな軍人達の戸惑いの返答も聞かず、宮橋は楽しげな笑い声を「わははははは」と上げて、軍用ヘリから大空へ飛び出していった。

 残された機内の中で、ようやく扉が閉まり出した時に男達が顔を見合わせた。

「そもそも〝ナンバー4〟と普通に喋っていた彼は、何者なんだろうな……」
「刑事だと言っていましたが、宮橋財閥だから慎重に対応せよ、と追って命令もありましたよね」