N県警からほど近くには、立派な高層ビルが立ち並ぶ場所がある。

 そこに、雪弥が〝おさえた〟例のホテルもあった。十分なヘリポートを持ったところで、近く、と適当に選んだところだったがこの地区で三つある三ツ星ホテルの一つだ。

「僕よりも扱いがひっどいな」

 到着早々、まるで予定されていたベンツでも待っているように迎えられたのち、フロアを進みながら、見送ったホテルの従業員らをちらりと見て宮橋が言った。

「どうしたんです?」
「いや。君の感性も十分こっち寄りらしいところにあるというか、立場相応ともいうか。いや、普段の君をみていると、そこは全く想像してもいなかったところというか」
「またよく分からない事を言いますね」

 見送った者の中には、ペコペコとする怯えた支配人の姿もあった。雪弥は屋上に向かう事しか考えていなかったから、もう気は屋上にしか向いていない。

「オーナー越しに対応を注意するよう言われたとはいえ、半ば事情を知らない支配人がかわいそうだな」

 状況を見て黙考した結果、宮橋がそう結論した。