ファミリーレストランを出たのは、数十分前の話である。青いスポーツカーは滑るように進むし、初夏の日差しの熱をしのぐように冷房も掛けられて窓も閉め切られているから、さぞや静かなドライブになるのだろうか――という雪弥の推測は、物の数分で裏切られた。

「はははははっ! どくがいい一般庶民共ッ、この刑事の僕のお通りだぞ!」

 意味もなく赤いサイレンを車上に設置し、宮橋が実に愉しげに国道を爆走する。緊急を要する事態でもないというのに、ハンドルを右へ左へと切って次々に車を追い越していた。

 運転技術はかなり上級だ。クラッチを上手い具合に切り替え、タイミングよくアクセルとブレーキを操作し、スポーツカーの重さを活かしてカーブも高速で難なく曲がる。

 雪弥は青いスポーツカーの助手席で、なんだかなぁという表情でいた。窓の外からずっと聞こえているサイレンの音は、雪弥の鋭い聴覚を叩いて煩い。

「宮橋さん、今擦れ違った車からクラクションもらいましたけど」