「一族の中で、闘いの才に関して君の横に出る者がいないかどうか、と問われれば、今のエージェントとして地位がそれを証明しているようなものだろう」

 雪弥は、うーんと考えながら缶ビールを開封する。自分の隣で飲んでいる宮橋の横顔を、つい、じーっと見つめた。

「宮橋さんは、そもそも殺しを嫌悪しているんですよね?」

 不思議になって尋ねる。エージェントという職業柄を知っているのに、そういえば出会った時からずっと親切だった。

 宮橋が、首を傾げている雪弥を見やった。

「守りたいと願ったり、人を心配したり同情したりする年下の男を、一方的に嫌悪する理由はないが?」

 そう言った彼が、ちょっと機嫌を損ねる事でも思い出したみたいに眉を寄せて、ずいっと雪弥に綺麗な顔を近付けた。

「そもそも、一族の他の人間がどうだかと、周りの目がどうだとか、君らしからぬ事をいちいち考えるんじゃないよ。君は兄と妹を持った、当主の立派な子供だろ」