彼がそうだというのなら、そうなのだろう。これまでの事が思い出された雪弥は、促されるがままじっくりと自分の胸を思った。

「『信じたかった』……」

 ふと、ぽつりと唇からこぼれ落ちた言葉が、ストンと胸に落ちてきた。

 途端に、込み上げていた殺気も静まり返った。どうしてか、とても胸が締め付けられる気がした。しゅんっとした雪弥に、宮橋は言う。

「本来、そうであるべきではない〝地よりも深い底にいるモノ〟が、初めて和解の努力をして歩み寄ろうとした。その中で〝絶望〟したのだから、憎しみも当然なんだよ」

 言いながら宮橋が上から退き、隣に腰掛けた。小さく鼻息をもらすと、喋り通したのが疲れたと言わんばかりに缶ビールを手に取る。

「始まりの頃、それは遠く向こうの長い年月の先にあった話だ。戦乱時代を闘い生き抜いてきた一族、それを守るためにあった【番犬】。――そして、戦士部隊を率いて当主を支え続けた【副当主】」

 雪弥は、高い天井を見ながら聞いていた。でも宮橋の話は、そこでぷつりと終わってしまう。