「その敬意を払う意味もあって【番犬】の名が役職名に加わった。そしてざっくり言うと、先々代々からずっと、そして君の中にも共に戦い続けてきたその血が流れている」

 一方的に話した彼が、挑発するように雪弥を引き寄せて睨み付ける。

「君は、人間をどうしたい。さぁ、僕に言え」
「……殺したい」

 雪弥は、殺気の底にある言葉に気付かされて口にした。

「殺したくてたまらない」
「どうしてだ」
「――憎い」

 そう言葉が出たところで、宮橋が胸倉を離した。

 そのままソファに頭が沈んだ。意外な言葉が口から出た拍子だったので、雪弥は茫然としてしまっていた。

 こちらを見下ろしている宮橋は、もう怒ったような表情もしていなかった。

「雪弥君、覚えておくといい。それが全ての始まりにして、スタート地点だ。でも憎悪しているのは君じゃなくて、君の血と魂だ。――そして奥底には、他にもあるだろう?」

 宮橋は教師のように言いながら、雪弥の胸を指先でトントンとする。