「いいか、君は何もおかしくはない。その魂が、この時代と世界に一致しないだけさ」

 青い目を丸くしている雪弥に、宮橋がしっかり言い聞かせるように近くから言った。

 一致していない、なんて言われてもよく分からない。それがおかしい事なのでは、とか、それは先程の自分の正当性を主張出来るようなものではない、だとか……色々と思うものの、結局は〝理解できなくて〟言葉が出てこなかった。

 すると、沈黙を見て取って宮橋が、追ってこう言った。

「番犬と聞いても、君がまるで聞こえていなかったみたいにピンとこないのは、君に、それを受け入れて、理解するだけの準備がて来ていないせいだ」

 胸倉を少し持ち上げられて、ソファから頭が浮く。

 怒っているのだろうか。眼前から睨みつけられた雪弥は、今にも鼻先が触れそうな彼に、ひとまず降参の形で両手を上げてみせた。

「いいか。中立の立場にいる魔術師として、今の君に言えるギリギリの範囲で教えてやる。蒼緋蔵家は、大昔に領地と一族を守る【番犬】と呼ばれているモノがいた」