「『L事件特別捜査係』の特権を行使した。そもそも、これが署にあったらあったで、大変な事になるんだけどね。長くそばに置くほど『気』が移るから」

 またよく分からない事を言う人だ。

 雪弥は、「はぁ、なるほど?」と答えてオレンジジュースを飲んだ。今後自分に必要とも思えなくて、L事件特別捜査係という存在定義についても尋ねようとは思わなかった。

 それに質問したらしたで、先に言われていた通り嫌がられたりするのかもしれない。そんな事をぼんやり考えて見つめていたら、宮橋もただただ見つめ返してきていた。
 

「持っているだけで人を不幸にする、というモノを知っているかい」


 しばらくして、沈黙を終わらせるように宮橋がそう言った。

 雪弥は「さぁ」と答えて、空にしたグラスをテーブルに戻した。そういった類のものは、あまりパッと浮かぶものもない。

「君は僕に、用事はなんだと訊いた。だから僕は、答えられる範囲で説明するだけだ。だから別に理解を求めるつもりはないし、ただ聞くだけで構わない」

 そう前置きしたかと思うと、彼がテーブルの上に置いた小袋を指でつまんで持ち上げた。