「飲むか?」
「飲みます」
「君の、ビールに対する潔いところは嫌いじゃない」

 頷き言った宮橋が、冷蔵庫の扉を閉める。

「その『怨鬼』の一族だが、相手は、見える領域の本物の『鬼』だ。必ず君のもとへ来るよ」
「宣戦布告した通り、決闘するためですか?」

 いや、そんな生ぬるいものではない。

 そもそも、決闘ってなんだ。雪弥は思った途端、なんだか可笑しくなった。いつの時代の表現だろうか。

「殺し合いでしたね」

 そう自分から訂正した。自分の手を見下ろして、あの時の事を思い返して続ける。

「僕の次に、『兄さんたちを』と言っていた。だから、殺しますよ。連れてきた全員、しまつします。僕が、先に相手を殺せばいい」

 語りながら、その綺麗な顔に雰囲気と対象的な〝とても穏やかな〟微笑みが浮かんだ。

 そうすれば問題は解決だ。悩まなくていい。アレは敵なのだ、つまりは自分が殺していいモノなのだ。

 キッチンから出てきた宮橋が、「ふうん」と呟きを上げる。