「また、僕は助けられなかったんですか」

 青いスポーツカーが停まっている場所へ出た時、開けた眩しさにくらりとした。けれど目を閉じることを忘れて、雪弥はそう呟いていた。

「助ける、か」

 宮橋が小さな声で口にして、それからこう言った。

「君のせいじゃないさ。それもまた、連中が与えようとしていたものだと思うと、僕はますます腹が立つわけだが」

 独り言のように続けた宮橋が、そこでよしと口にして振り返った。

 直後、ガツンと雪弥は頭に拳骨を落とされた。何か直前まで、とても嫌などろどろとした何かを考えていた気がしたけれど、全部、見事に頭の中から吹き飛んだ。

「いきなり何をするんですか。びっくりしましたよ」

 痛くはなかったものの、衝撃がした頭を撫でながら雪弥は目を丸くした。

 すると宮橋が、綺麗な顔を不良じみた様子で歪める。

「チィッ、このド級の石頭め」
「あ、宮橋さん。今ので手を痛めませんでしたか? 大丈夫ですか?」
「やめろ、僕の手をみようとするな。余計イラッとするわ」

 取られた手をすぐに奪い返し、宮橋が目の前にある雪弥の頭を見下ろして、すかさず手刀を落とした。