それは、偶然にも宮橋の知る被害者の親族の一人だった。そして、たまたま雪弥もこのタイミングで来訪しただけである。

「『殺し足りないだろう』と、あの奇妙な気配がする人間は口にしていた。だから、その余興として、楽しい殺し合いという〝贈りもの〟にしようとした」

 そう言われた言葉が、不意に雪弥の胸に刺さった。

 殺し足りない、と口の中で彼女の言葉を繰り返した。そんなことない、とすぐに否定したかったのに、何故か言葉が出てこない。

 その時、不意に宮橋の声が沈黙を破った。

「なるほど。よぉく分かったよ――とんでもない連中らしいな」

 低い声で言った宮橋が、今にも怒りで引き攣りそうに口角を引き上げる。

「そいつらは、よほど僕の癪に障る奴らであるらしいね。何がなんでも、殺人鬼に仕立て上げたいわけか?」

 その目は、珍しく殺気立っていた。

 雪弥は、沈黙が破られたと同時に、金縛りが解けて宮橋を見た。その普段らしくない彼にまたしても戸惑う。