「彼らは、いい獲物として〝私〟を提供しようとしていたようだった。見えぬモノの領域に侵略し、こう口にしていた、『殺させてあげよう』と」

 似た台詞を、最近どこかで聞いた気がした。

 そう思って、ふと記憶を辿った拍子に浮かんだのは、高校生として潜入していた際、マンションの前で声を掛けてきて異形のモノと闘わせた男。

 ――先日、兄の屋敷にあった新聞で、偶然にも写真で顔を見たその男、『夜蜘羅』だった。

 すると、少女が真っすぐこちらを見た。

「それは、正しい。うまく隠れていたが、〝見えぬ領域の本物の鬼の目〟はごまかせない。そやつが、その魔術師の後ろにはいた」

 ぴたりと、長い爪の指を向けられてそう告げられた。

 だから一人の少女が行方不明になった。風間の店から特別な着物が盗み出され、そして宮橋が「有り得ない」と口にしていた鬼化が進み、――今、彼女は、肉体的にも死を迎えようとしている。

「なんで」

 何も関係がない、まだ中学二年生の一人の少女だ。