宮橋が、自分を落ち着けるように「ふぅ」と息を吐いて髪をかき上げた。なんて事をしてくれたんだと、吐息交じりに応える。

「魂がなければ、人は〝次の生〟を迎えられない」
「そう。それは本人が望んだ縁と運命であるのなら、許されること。しかし、そのルールを破った」
「それができるのは、よく〝見える〟魔術師のみ……魂を〝使いもの〟にしたのか? 業と罪の重さを分かっていながら、そいつは〝たかが人間の癖に〟人の来世を、物として、ここで消費したのか」

 宮橋が、確認するように低く問い掛けた。その声は、雪弥でもハッキりと分かるほど怒りに満ちていた。

 少女が、こう答えながらゆっくりと手を下ろしていく。

「そうだ。実に、奇妙な術だった。無数の運命を外し、縁を解き、そうしてこの娘はこの世の(ことわり)から奪われた」
「だから、君みたいな大物が出てこられたわけか。ルールが破られたから、一時、世界も目をつぶった」
「左様。妾が、他の古き〝母鬼〟と違い、人の腹から生まれた鬼であったことも、あるのだろう」

 その時、雪弥は少女に目を向けられた。