「君に自覚がないのなら、それでもいいんだけれどね」

 どこか含むようなニュアンスで独り言のように言って、珈琲に口を付ける。

「つまりはざっくり言ってしまえば、君は大食らいなのさ」
「はぁ、なるほど……?」

 初対面の人に、そんな事を言われている状況も妙な気がする。大食らいなんて誰かに言われた事も記憶にないように思えて、雪弥は「うーん」と首を捻ってしまう。

 一品目の料理を食べ、宮橋のサンドイッチを一つ胃に収め、続いてパスタ料理をただひたすら食べ進める。次の定食料理に移った頃、空き皿を下げに来たぎこちない愛想笑いの男性店員の後ろから、サラリーマン風の男達が「めっちゃ食ってる……」と覗き込んでもいた。

 宮橋は呆れた様子で、自分のサンドイッチを食べ終えた。最後のシメに冷たいアイスコーヒーを追加注文し、ついでに本人に確認しないまま真面目な顔で「彼にはオレンジジュースを」と店員に伝えた。

「それで、あなたの言う『用事』というのはなんですか?」

 僕は何をすれば、と全て完食した後に雪弥は改めて尋ねた。