人が住まなくなって、一体どのくらい経っているのか。朽ちた庭の脇を進んだ宮橋が、ふと家の裏手部分に出たところで足を止めた。
そこには、大きな一本の朽ちた木があった。
いや、ぎりぎり生命をたもっている老樹、というべきだろうか。いくばくかの花を実らせ、こうして毎年枝先に遠慮がちに葉を付ける程度に。
その大きな木に寄り沿うようにして、一人の少女がぺたりと座り込んでいた。
薄い普段着の上から、ぼんやりと光っているようにも見える不思議な美しい着物を羽織っている。それが足元には広がっていて、目を閉じている彼女の頭には、長く白い角が二本生えていた。
「君が〝ナナミ〟だね?」
宮橋が声を掛ける。
すると少女が、その瞼を震わせて、ゆっくりと目を開いた。
一緒に覗き込んでいた雪弥は、その目を見てハッとした。――その瞳は〝獣〟で、柘榴のように赤く、金色の虹彩を帯びていた。
「…………これ、完全に鬼化しているんですか?」
雪弥は、思わずそう口にしてしまった。
そこには、大きな一本の朽ちた木があった。
いや、ぎりぎり生命をたもっている老樹、というべきだろうか。いくばくかの花を実らせ、こうして毎年枝先に遠慮がちに葉を付ける程度に。
その大きな木に寄り沿うようにして、一人の少女がぺたりと座り込んでいた。
薄い普段着の上から、ぼんやりと光っているようにも見える不思議な美しい着物を羽織っている。それが足元には広がっていて、目を閉じている彼女の頭には、長く白い角が二本生えていた。
「君が〝ナナミ〟だね?」
宮橋が声を掛ける。
すると少女が、その瞼を震わせて、ゆっくりと目を開いた。
一緒に覗き込んでいた雪弥は、その目を見てハッとした。――その瞳は〝獣〟で、柘榴のように赤く、金色の虹彩を帯びていた。
「…………これ、完全に鬼化しているんですか?」
雪弥は、思わずそう口にしてしまった。