折り返し確認の電話があったのは、逮捕劇があった現場を離れ出して数分だった。宮橋がタイミング良く赤信号でそれに応える。

「武器は一切使っていない。〝素手〟だ」

 電話の向こうから『素手だけ!? まさかの!』という上司の叫びが上がったが、宮橋はそっけなく伝えるなり電話を切った。

 信号が青に変わった。他の車と同じように、再び青いスポーツカーが動き出す。

「犯行から数時間後の逮捕は喜ばしいが、小楠(おぐし)警部は頭が痛そうでもあったな」
「はぁ。なんか、すみません……」

 雪弥は、小楠警部という人物を思いながら、宮橋に謝った。車に乗り込むまでの間も、宮橋が何度か電話に対応していたのを思い返した。

 出る直前に合流したパトカーの警察官にも、「一体何が……?」という顔をされた。どうやら車かバイクでも投げて止める、という方法は取らなくて正解だったらしいが、もう少し加減すべきだったようだ。

「問題ない。民間人を巻き込んでいないんだから、上出来だ。車に乗っていた金と武器の銃も回収できたようだし。僕もつい先日、白バイを一台大破させた」

 自分の車を海に落としたとは聞いたが、警察のバイクも大破って……一体何があったんだろうな。