「可愛い顔で何をさらっとおっそろしいことやってんだよっ、あの研修中の新人は!?」
「ちょっとやんちゃなのさ」
「ちょっとだと!? あれが、ちょっとだと!?」

 指をビシリと向けて、三鬼が思わずといった様子で二度言った。答える宮橋の表情は、真面目に取り合っていないと言わんばかりに薄ら笑いだ。

 車内に残っている藤堂が、あちらへ目を向けたまま言う。

「先輩方、今は言い争っている場合じゃないですって……」

 言い合う宮橋と三鬼の向こうで、四人の青年を両手に二人ずつ掴んで、雪弥がずるずるとひきずってきていた。

 全員失神しているという事態の中、犯行グループ全員に手錠が掛けられた。藤堂が無線で全車両に伝え、近くにいる数台のパトカーがくることになった。

 無線でずっとやりとりしている藤堂は、なんだか疲れ切った表情だった。同僚や先や上司に、一体どういう状況なんだと言われてもうまく伝えようがない。

「おい宮橋、お前が小楠警部にきちんと説明しろよ」

 頭痛をこらえた顔で、額に手を当てた三鬼が呻く声で言う。彼は煙草を吹かしてしまっていて、失神している青年たちの方を見られない様子だ。

 遠くで、救急車とパトカーのサイレンが聞こえ出していた。

「僕らは少々忙しくてね。馬鹿三鬼に任せるよ」
「ざけんな」

 昨夜の睡眠不足の目で、三鬼がギロリと宮橋を凄む。

 その傍ら、雪弥は携帯電話で〝夜狐〟にポチポチとメールを送って指示を出していた。

――この型の黄色いスポーツカー、至急探してくれ。

 遠くの場所から、密かに見守っていた暗殺部隊の夜狐が、狐の面をした顔で「急ぎの案件なのだろうか?」と珍しげに首を捻っていた。