見つめ合う雪弥と宮橋の近くまできた逃走車が、転がっているバイク気付いた。窓を開けて「何事だよ!?」と向こうから叫んでくる中、座りこんでいる仲間たが「刑事が怖い」「助けて先輩」やらと叫び始める。

 ――が、そんなことなど宮橋はお構いなしだ。

 宮橋は、鬼のような怒気を放って雪弥に告げた。

「今後、僕の車を持ち上げようとしたら許さん」
「あの、ほんと、すみませんでした。えぇと、弁償して新しいのを用意しますから」
「本当か? ふむ、それなら話は早い。なら、僕が望んでいた黄色いやつだ。それを用意できたなら、今回の件はチャラにしてやる」

 なんとしてでも急ぎ用意させよう、と雪弥は心に決めた。

 その会話の間に、車が窓を閉めてぐんっとスピードを上げた。見捨てられたと知った青年二人が、悲劇のような声を上げて雪弥と宮橋は気付いた。

 目の前から、猛スピードで逃走車が走り抜けていった。

 見送った二人の間に、しばし沈黙が漂った。