なぜか喧嘩を売るように言われてしまった。よしよし大きな怪我はないなと確認していた雪弥は、ふと思い出して、ナンバー1からもらっていた偽の警察手帳を掲げて見せた。

「警察です。強盗犯が逃走中だと応援要請を受けました」
「え、警察……?」
「制服じゃないってことは、まさか刑事の方……?」

 おそるおそる質問されたので、雪弥はひとまず、こっくりと頷いてみせた。

 その直後、青年たちが丈夫にもガバリと立ち上がった。まるでホラー屋敷から飛び出したかのような形相で、道を逆送するように走り出した。

「こ、こここんなおっかねぇ『刑事さん』なんて知らねぇよ――――っ!」
「絶対ぇSだ! 先輩たちよりヤバイ人だ!」

 よく分からないことを色々言われている。

 雪弥は首を捻りつつ、トンッと軽く地面を蹴るようにして走り出した。一気に追い付かれた青年たちが、迫る彼を見て「ひぃいいいい!?」と悲鳴を上げる。

「逃げられたら困るんです。掴まえてくださいと、指示されていますから」
「「んぎゃあああああ取って食われる――――っ!」」
「取って食われるって、何が?」

 ほとほと困った顔で、雪弥は逃げようとする青年二人を掴まえた。ぐりんっと踵を返した拍子に、その細腕にぶら下がっている青年たちが、遠心力で振り回されて「ぐえっ」と呻き声を上げる。