県警を出たあと、彼の青いスポーツカーで近くのファミリーレストランに移動した。

 奢るから好きなものを注文しろ、と不機嫌なのか親切なのか分からない調子で偉そうに言われた雪弥は、ひとまず丼ぶり物とパスタ料理とグラタン、計五品ほど取った。

「君は、僕の臨時の助手みたいなもの――つまり、下僕だ」

 注文した料理が届いて食べ始めたところで、珈琲とサンドイッチに手を付けないまま、宮橋が当たり前のような顔でズバッと言い切った。

 ランチ時間ではないファミリーレストランは、客もまばらで落ち着いている。見つめ返す雪弥の手が止まって、しばし二人のいる席が、しん、と静まり返った。

「…………下僕……。あの、すみません、宮橋さん。後輩とか部下とか、そういう感じでもっと他に言い方はなかったんですかね?」
「あるわけないだろう。相棒としているからには、君に求めるのは大きく二つ」

 君は馬鹿か、と目を向けて宮橋が説明を続ける。

 なんで自分が叱られている形になっているんだろうな、と雪弥は首を傾げた。命令厳守だから下僕という言い方をしたのだろうか?